店主インタビュー第2回 口笛文庫・尾内店主
神戸・六甲の地に、20代で古書店を開いた尾内さん。
開店から約4年経ち、先日店舗の改装が完了。
さらに、ゆったりじっくり本を選べるようになった空間で、
知られざる古書ワールドについて、たっぷり語っていただきました。




神戸マルシェ・店主インタビュー
第2回 口笛文庫 店主 尾内 純さん


ダイヤ音楽のある古本屋

「口笛文庫」という店名の由来について、よく聞かれます。
実は、僕はここ六甲にある神戸大学を卒業した後、音楽関係の仕事をしていたんです。
その流れから、この店を開くときは、
古本と同じくらい、中古も新譜も含めたCDを扱おうと思っていました。
だから、音楽を感じさせつつ軽やかなイメージの「口笛」と
本を表す「文庫」をくっつけて、「口笛文庫」と名付けました。
開店から4年たった今は、ずいぶん古本が多くなりましたが、
入り口正面のコーナーには、CDを置いて、音楽関係の本を集めています。

店のBGMには、音数の少ない曲を選ぶようにしています。
ギターソロや、ジャズの男性ボーカル、アコースティックスイングなんかですね。
今流れているのはラジオではなくて、ナルニア国物語の英語版朗読CDなんですよ。
音楽だと飽きたり、逆にノッてしまったりするので、このぐらいがちょうどいいんです。


ダイヤ意外に知らない、古書業界あれこれ

僕の古本屋デビューは10代半ば。地元の春日野道の商店街にある古本屋でした。
店先に、雑誌のバックナンバーや漫画、ちょっと色っぽい本なんかも置いてあるような
気軽に通える店だったので、自然に通ってました。
その春日野道の古本屋もそうなんですが、本当に価値のある本は店先には並んでなくて、
奥にあったり、倉庫にあったりすることが多い。そういう本は頻繁には売れませんから。
だから、探している本が店頭にないからといって、諦めるのはすごくもったいない。
ぜひ店主に一声掛けてみてください。

古本の仕入れ方法には大きく二通りあって、一つはお客さんから直接買い取る方法で、
もう一つはあまり一般の人は知らないと思いますが、業者の市があるんです。
そこでは、入札方式で買い手が決まるので、
僕にとっては本を見る目を養う場でもありますね。
たとえば、僕が5千円で入札した本に、ベテランの方が2万円と入札していたりする。
そういう場を踏んで、本の価値や相場を勉強していくんです。

古書店が圧倒的に多いのは東京です。完全に東京集中型の業界ですね。
出版社も集まっていて、お客さんも多いので、
同じ商品でも業者間の取引では東京の市場に出せば高値が付くことも珍しくない。
古書店の店主はみんな「一山当てたい!」と思ってますよ(笑)。
趣味の延長で気ままに商売しているように見えるかもしれませんが、
のんびりしていてはやっていけません。
だから多くの店が古本市に出店したり、インターネットで本を売ったりしています。

趣味で古本を集めてるわけじゃなく、お店の経営を考えると古本は商品です。
商品だから、売って現金に換えないと意味がない。
売ったお金でまた仕入れるということの繰り返しです。
いい本が手に入ったと思っても、しばらくしたら全部売ります。
所有欲はほとんどなくなりましたね(笑)。


ダイヤ最近心惹かれる「紙モノ」の魅力

お店の品揃えは僕の興味範囲を写す鏡のようなもので、
最近増えてきたのが、いわゆる「紙モノ」。
紙モノとは、木版刷りのマッチラベルとか、オランダの更紗の図案帳とか、
紙に印刷してあるけど、本として出版された以外のものです。

本はどんなに珍しいものでも、お金さえあれば大抵は手に入る今の時代にあって、
紙モノは欲しくても、探す手段すらないことが多い。
興味のない人には紙くず同然という物もあるので、
どうしても捨てられることが多くて、残っているだけで希少性が高いものも多くあります。
見出す人が価値を付けられるということが面白いですね。

紙モノを入手するのは、業者の市の他には、古書の買い取りに行ったお宅で、
「亡くなった祖父のコレクションなんですが…」と相談されるケースがほとんど。
おじいさんが大切に集めていたことを知っている家族にとっては、
捨てるに捨てられないものなんですよね。

たとえば、満州や朝鮮の観光スタンプや絵葉書などを集めた
スタンプ帳というのがありました。こういうものって少なくなって来ていますし、
資料的な価値があったり、デザインも独特で面白い。
眺めていると集めた人の足取りが浮かんでくる、というのもとてもいいんです。
こういう紙モノは、一つひとつを見ていても、「これをよく残していたなぁ」と、
集めた人だけでなく、残してくれた人への感謝の思いも湧いてくるんですよね。


ダイヤ落ち着いて暮らせる町、六甲

よく考えると六甲には学生の頃からお世話になっていて、
落ち着いた雰囲気が気に入ってます。
お店の近くに自宅もあり、生活のほとんどが六甲で完結してますね。
住宅街に点在している店で、パンや花を買う。そういう日常風景が当たり前にある。
近所で気に入っているのは、JR六甲道駅近くの「垂水飯店」や、
お店から東へすぐの洋食店「自由軒」。ここは学生の頃から行ってました。
カウンターしかない古い洋食店なんですが、なんだか落ち着くんです。
この気取らない空気感、生活感が、六甲の好きなところですね。

うちの店にも、近所のおじいさんがぶらりと立ち寄って、昔話をしていってくれる。
近所の子どもたちもよく遊びに来るんですが、
「この本借りたいんです」と、完全に図書館と勘違いしてる子がいると思えば、
ずらりと並んだシリーズの本を見て「すごい。どこから仕入れたん?」と、
一人前に商売を分かってる子もいる。見ていると本当に面白いです。

全国的な流れ以上に震災の影響で、神戸の古書店は減っています。
サンパルにある「古書のまち」も今は一軒だけになってしまいましたし、
センター街や様々な場所で、ずいぶん古書店が閉店しました。

古書店が減ると当然、小さな頃から古本に触れることが少なくなります。
お店を構えずにインターネットで商売をする店も増えてきていますが、
僕は店を構えることに意味があると思っています。
古本の値段って、裏表紙をめくったところに鉛筆書きしてあるのが常識なんですが、
「これいくらですか?」と聞いてくる人がいる。
小さな頃から古本屋に触れていたら知っていることを、知らないんですよね。
だから、できるだけ多くの子どもが古本に触れる機会を作っていきたいなと思います。


ダイヤ生活の一部に溶け込む古書店になりたい

古本屋は本がなければ商売ができません。
住宅街、それも古い家が残っている住宅街は、本が入ってきやすいんです。
繁華街だと、買い取ってほしい本を持って行くのも大変でしょう?
そういう意味でも、古本屋って、わざわざ行く場所ではなく、
町の一部であり、日常の延長にある場所だと思うんです。

それに、街中にあると流行を追いかけたりしないといけない気がして。
“お洒落だから”と外国の本を買い付けに行ったり、
そういうことを否定はしませんけど、僕がやることじゃない。
あくまでも生活の延長にある古本屋でいたいんです。

神戸マルシェも理想は、生活の延長というか一部でありたいですね。
ぶらっと寄って、ぶらっと買えるみたいな。
今よりももっと自然な感じで、いつかできたらいいですね。



本イベント情報
「古書大即売会」

期間/1月29日〜2月3日
場所/さんちかホール
さんちか恒例の古書即売会に、口笛文庫さんも出店されます。
尾内さんも会場にいらっしゃる予定ですのでぜひ遊びに来てください!
詳しくはこちら↓
 ・兵庫県古書籍商業協同組合 さんちか古書大即売会
 ・兵庫県古書籍商業協同組合 新着情報



【尾内店主が選ぶ、私の店の3品】
・ずっと売れてる定番商品
「絵本」
 お店に入って右手の壁一面は、子どものための本のコーナー。
 やはりいつの時代も子どもは絵本が大好き。最近は、大人の姿もちらほら。

・マニアが喜ぶレアアイテム
「黒っぽい本」
 古書業界では、書店に並んでいるような一般書を「白っぽい本」と呼び、
 明治〜戦前ぐらいに出版された本を「黒っぽい本」と呼ぶのだそう。
 価値ある絶版本なども含まれ、まさに古本好きが喜ぶアイテムが並ぶ。


・個人的に気に入ってる隠れたおすすめ商品
本じゃない「紙モノ」
 インタビュー本編にもあった、最近尾内さんが惹かれている、
 本じゃない「紙モノ」たち。定期的にチェックするおじさまたちも。


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取材・文/西川有希

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